私がマウスピース矯正で遠心移動を重視する理由
2025.12.01
池袋の歯医者さんみんなの矯正歯科・こども矯正歯科クリニック
〒171-0014 東京都豊島区池袋2丁目2−1 ウィックスビル 9階
電話番号 03-6907-3967
私は、マウスピース矯正の最大の強みは「遠心移動ができること」だと考えています。
遠心移動は単純なスペース確保のテクニックではなく、非抜歯治療・Ⅱ級改善・前歯の後退・咬合の安定など、矯正治療全体を支える重要な戦略です。
多くの先生が「どこまで遠心移動できるのか」「それは本当に安定するのか」と疑問に思われます。
私は年間を通じて多くの治療計画を立てる中で、遠心移動を正しく使えば治療の安定性が格段に高くなることを実感しています。
ここでは、私が遠心移動を治療計画の中心に置く理由を整理します。
遠心移動とは歯列全体を後方へ送る動き
遠心移動は、大臼歯を後方へ移動させ、歯列全体に新しいスペースを作り出す技術です。
私は治療計画を作成するとき、まずこの後方スペースがどれだけ確保できるかを必ず評価します。
私の臨床基準では
・上顎は4ミリ
・下顎は3ミリ
の遠心移動が可能であると判断しています。
両側では
・上顎8ミリ
・下顎6ミリ
となるため、小臼歯1本分の十分なスペースが生まれます。
このスペースが確保できれば、叢生の改善だけではなく、前歯の位置を自由にコントロールしやすくなり、治療の選択肢が広がります。

私が遠心移動を重視する症例
遠心移動は、ただスペースを作るために行うのではありません。
私は次のような症例で積極的に使用します。
・叢生が強い非抜歯希望
・Ⅱ級の改善
・口元の突出感を下げたいケース
・前歯の傾斜が強いケース
・上顎前突を非抜歯で治したいケース
特にⅡ級の治療計画では
・バイトランプ
・遠心移動
・側方拡大
この順番で考えることが多く、これが私の治療の安定性につながっています。
遠心移動を成功させるための「絶対条件」
遠心移動は強力な技術ですが、条件を満たさなければ成立しません。
私は以下を“絶対条件”としています。
親知らず(8番)の抜歯
萌出している親知らずが残っていると、後方に歯を動かすスペースが完全に塞がれます。
私は
萌出している8番は100%抜歯
と明確に決めています。
これは単なる好みではなく、臨床での再現性を高めるための必須条件です。

7番遠心の精密な印象
遠心移動は後縁の適合が命です。
7番遠心が不鮮明な状態では、マウスピースの後縁が浮き、後方へ動かす力が伝わりません。
親知らずの抜歯は印象精度の確保にも直結します。
私は「印象が悪ければ治療計画は成立しない」という考えを徹底しています。
顎間ゴムの使用タイミング
遠心移動をスムーズに行うには、顎間ゴムのタイミングが非常に重要です。
私は
・叢生の改善
・レベリング
・スピーの湾曲改善
これらのステップが整ってから顎間ゴムを使用します。
この順番を守ることで、遠心移動が安定し、咬合も乱れません。
遠心移動にも限界がある
私は遠心移動を治療計画の核としていますが、万能とは言いません。
特にⅠ級は注意が必要です。
・上顎だけの遠心移動は禁止
・下顎だけの遠心移動も禁止
・上下ともに同量なら可能だが限界は4ミリ
これ以上は顎関節症のリスクが上がる
これは、実際の臨床で「咬めなくなる」「顎がカクつく」などのトラブルを経験し、導いた基準です。

IPR・側方拡大と組み合わせてこそ意味がある
私は遠心移動だけで治療を設計しません。
IPRや側方拡大と組み合わせることで、非抜歯でも大きなスペースを作ることができます。
私が実際に採用している組み合わせは
・IPR 0.5ミリ×11か所
・遠心移動 4ミリ×2
・側方拡大 0.6ミリ
合計 14.1ミリのスペース確保
となります。
これは非抜歯で治療を進めたい患者にとって非常に大きな利点です。
まとめ
私は、遠心移動をマウスピース矯正の中で最も重要な治療要素の1つと考えています。
スペース確保、咬合改善、非抜歯治療、Ⅱ級改善など、複数の目的を同時に達成できる力を持っています。
ただし、適応基準と条件を守ることが絶対の前提であり、私はその基準を明確に設定し、治療計画の核に据えています。
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